前の項で東洋医学的な不眠の分類を大まかに説明してみましたが、それでは具体的にどのような方法でどこを刺激すれば「ぐっすり眠れる体質づくり」ができるのでしょうか?
ここでは、大まかな5つのタイプ別にあなたにもできる「ツボ療法」の提案と日常生活で気をつけたいことについて説明してみたいと思います。
1.痰熱証による不眠
「痰」と「熱」と読んで字のごとく「カラダの内部に余分な水分と熱がこもっている」というイメージです。
カラダの内部がこのような状態にある場合、まず考えられるのが胃腸の機能の低下です。
次に考えられるのがお酒の飲みすぎや水分の取りすぎ、甘いものや辛いものの食べすぎ、過労などです。
カラダの内部の水分が多すぎるとその余分な水分は「痰」を生成し、逆に少なすぎると熱を冷やすことが出来なくなり「熱」を発生させてしまいます。
このタイプの不眠の治療のポイントは胃腸の機能を整えることと余分な水分をはやく排泄させることです。
ツボは「足の三里」、「豊隆」、「中カン」という胃腸の機能調節ができるツボと「内関」、「神門」などのココロを落ち着かせ眠りを誘うツボを併用していきます。
「足の三里」、「豊隆」、「中カン」は押して気持ちがいいくらいの力で、「内関」、「神門」はやや強めの力で刺激してみましょう。
またこのタイプの方は「胃腸が張りやすい」、「胸焼けしやすい」などの特徴がありますが、そんな時には「太ももストレッチ」が有効です。
太ももの前の部分(大腿四等筋)をストレッチしてあげると胃腸が「スーッ」としてきますので一度お試しください。
2.肝火証による不眠
東洋医学でいう「五臓六腑」とは西洋医学の臓器そのものとは少し見解が異なるのですが、東洋医学で表す「肝」には幾つかの生理的な特徴があります。
例えば、「肝」は目に関係があって目の充血やドライアイなどの治療には「肝」に関係するツボを使ったり「筋肉」との関係から筋肉の引きつれなどに「肝」に関係するツボを使ったりします。
またイライラしやすかったりストレスを感じたりすると「肝」がダメージを受けるといった具合にいろいろな生理機能や現象を「五臓六腑」に結び付けます。
さて睡眠に関係する「肝」としては、やはり精神的な要素、ストレス、不安感などが大きなウェイトを占めてくると思われます。
ストレス社会で常に精神的に緊張状態におかれている生活を送っていると「肝」がダメージを受けます。
治療ポイントは「肝」に関係するツボということになります。
具体的には、「行間」、「太衝」、「足臨泣」さらに前述の「内関」、「神門」なども効果的です。
どのツボもやや強めの力で刺激してみましょう。
このタイプの不眠の場合、「あなた流ストレスの解消法」を見つけてみるのも大きな治療の一つになります。
3.心脾両虚証による不眠
このタイプの不眠は過度の心労や疲労が「心」と「脾」という二臓の働きを抑制させる事で起こるもので、倦怠感や無力感、汗をよくかいたり、息切れしたり、食欲不振になったりよく下痢をしてしまったりと不眠症状以外にさまざまな症状を訴えます。
また顔色が白っぽく血色がないのも特徴的です。
「心脾両虚」とは「気血両虚」とも言われ、イメージ的には気力が減退し血液も不足しているような感じです。
こういったタイプの改善には「気」と「血」を補うようなツボ刺激が必要になります。
具体的には「脾」に関係するツボである「三陰交」、「血海」、「足の三里」、「気海」に「内関」や「神門」を付け加えると効果的です。「気持ち良い」程度の強さで刺激してみましょう。
日常生活で注意したい点は胃腸に負担をかけないようにすること、一人で思い悩みすぎないことです。
特にストレスや緊張すると胃腸の調子が悪くなるタイプの方は要注意です。
4.心腎不交証による不眠
生まれつきカラダが虚弱体質な人や長く病気に悩ませれている人などはこのタイプの不眠症になりやすい傾向があります。
夜寝るときに「手足がほてる」「のぼせる」という特徴がありますが、これは「腎」における水のコントロールがうまくいかず「心」の火が強くなりすぎることでおきる現象とされています。
またこのタイプに特徴的なのが「腰」や「膝」にだるさや痛みがあったり「耳鳴り」や「耳が聞こえにくい」などの症状が出ることが多いことです。
このタイプの不眠には「腎」の「気」を補うことが必要になるので治療のポイントになるのは「腎」に関係するツボになります。
具体的には「復溜」、「三陰交」、「気海」、「関元」に「内関」や「神門」を加えると効果的です。
この場合の刺激はどのツボも「気持ち良い」程度の力ぐらいが良いです。
日常生活で気をつけておきたいことは「カラダを冷やさない」ということです。「冷え」という刺激が「腎」に多きな悪影響を及ぼすので冷たいものの食べすぎ・飲みすぎには特に注意が必要です。
また夏にクーラーなどでカラダを冷やしすぎるのもよくありません。最悪でもクーラーの風を背中から受けるような場所での仕事は止めましょう。デスクを換わってもらえるようなら是非そうしましょう。
5.心胆気虚証による不眠
このタイプの不眠は西洋医学でいう「不安神経症」を伴うタイプの不眠といえます。
ココロに不安なことがたくさんあったり恐怖心があったりあるいは心身の過度の疲労などによって症状が悪化する傾向があります。
このタイプの不眠には「心」の「気」を補うことと「胆」の「気」を補うことが必要になります。
具体的には「足の三里」、「気海」、「関元」、「神門」、「丘キョ」、「陽陵線」などを使って「気持ち良い」程度の強さで刺激します。
またこのタイプの場合ココロに色々な不安要素が強くあるので「カウンセリング」などで自分のココロを少しでもカウンセラーと共有してみるのも良い解決法になるかもしれません。
補足
※「経穴(ツボ)」について
この文章中に掲載した「経穴(ツボ)」はあくまで参考です。
この他にも「不眠」に対して効果の期待できるツボは多く存在していますが、ここではあくまでこのサイトの方針である「自分でできる範囲」での記載に省略させていただきました。
|